建設現場で指3本を失った青年が起業家に 家族の反対振り切り起業した中西光希社長が実現したいこととは

2026.02.26 IT・通信

  • 法人名:LIVE THE CREATIVE株式会社
  • 代 表:中西光希
  • 業 種:情報通信

両親の離婚、突然の引っ越し、野球推薦の高校を退学──。中西光希社長は、波乱の少年時代を経て、現場職人やアパレル販売員を経験。その後、解体現場での大事故により左手の指を3本失う大けがを負う。絶望のなかで出会ったのが「IT」と「マーケティング」だった。そして、コロナ禍を経て「自分の人生に責任を持ちたい」と思うようになり、LIVE THE CREATIVE(リブ ザ クリエイティブ)株式会社を立ち上げた。建設業界出身だからこそ見える課題と、乗り越えてきたからこそ語れる希望。逆境を原動力に変えてきた男が、いま届けたいメッセージを語ってくれた。

「建設現場で左手の指3本欠損」 

──最終学歴が中卒とのことですが、どういった幼少期を過ごしたのか教えていただけますか。 

家庭環境が複雑で、両親は私が4歳のときに離婚して、その後は大叔父と大叔母に育ててもらいました。母とは週に1回会えるくらいの関係で、僕にとってはおじちゃんとおばちゃんが実質的な親だったんですが、結構幸せだったんですよ。でも、反抗期全開の中学2年生のとき母が再婚することになり、神奈川に引っ越すことになったとき、葛飾での生活や友人たち、大好きだったおじちゃんおばちゃんと離れるのが本当に辛くて、そこから一気にグレました。 

――退学後は職人をされていたそうですが、なぜこの道に? 

小さいときの夢が大工になることだったからですね。でも、17歳からはなぜかアパレルを始めたんです。今考えるとモテたかったんだと思います。結局アパレルは4年間やったんですけど、21歳でやめてまた建設業に戻りました。そしたら、とある解体現場で上階から降りてくる80kgの鉄骨を受け取る作業をしていたときに、左手の指を3本失う大怪我をしたんです。 

――当時の心境について教えていただけますか。 

人生で1番落ち込んでいたと思います。ちょっとやんちゃな21歳だったこともあって「指ないとかダサい」といった感覚で、恥ずかしかったです。指がないことがとてもじゃないけど許容できなかったので、当時はコンビニや清掃業の仕事しかできない、子どもは作れないといった具合に全てにおいてネガティブでした。毎晩泣いて「もうどうにでもなれ」と思っていましたね。半年くらい立ち直れませんでした。 

――そんな状態からどうやって立ち直られたんですか。 

怪我して3ヶ月が経ったとき「もう君の手は元の形にはならない」とお医者様に言われた瞬間、不思議と吹っ切れたんです。「もうこの事実を受け入れるしかない」と腹をくくった。正直、逃げようと思えたら逃げられましたが、育ててくれたおじちゃんとおばちゃんの顔が浮かんだのと、プライドがあったおかげでドロップアウトせずにすみました。 

未経験でWebの世界へ「何度もやめようと思った」 

──その後の社会復帰、キャリアの再構築はどう進んだのでしょう。 

怪我で現場に戻れなくなった後、しばらくは何をしたらいいか本当にわからなかったです。でも、ずっと入院していると段々とやることがなくなってきて、マーケティングの本を読んでいました。『孫子の兵法』という、世界最古のマーケティング本。それでITとマーケティングってかっこいいなとなり、退院後は未経験でWebの業界に入りました。パソコンも触れなかったので、まずはテレアポの仕事でしたが、徐々に慣れて自力で案件を取れるようにもなりました。初めての営業の世界でしたが、アパレル時代に培った接客スキルやトーク力が活きて「意外といけるかも」と思えたんです。その後は広告代理店に転職したんですが、これまで経験した職業で1番きつかったです。 

――それはなぜでしょうか。 

ハードワークだからですね。アパレル時代は、19歳で本社勤務も経験させてもらったのですが、1、2週間かけて作る広告ポスターを、代理店は1日でやる。結構なカルチャーショックでした。自分の使えなさに絶望もしましたし「やっぱり中卒じゃ通用しないのかな」と思って何度もやめようと思いました。企画書を夜中の2時まで作ることも当たり前のようにありましたが、やっぱり怪我していたこともあって退路がなかったので、なんとか続けられましたね。ターニングポイントとなったのは、社内で嫌煙されがちだった建設業界のお客様を率先して引き受けて、結果を出したことですね。 

──大怪我から完全に立ち直られたんですね。ところで、起業を決断されたのはいつ頃だったのでしょうか。 

コロナ禍です。生活も価値観も変わる中で「このまま誰かの下で働いていていいのか」と思いました。人の人生を生きるのではなく、自分の人生に責任を持ちたい。その想いが強くなって、2020年に起業を決意しました。最初、家族からは猛反対されて、結婚後初めて1週間ぐらい奥さんが出ていっちゃいました(笑)。説得して今に至りますが、あのパンデミックは大きなターニングポイントでしたね。 

──事業の強みはどこにあると思いますか。 

実業とマーケティングの両軸を持っているところが強みです。Web制作、ドローン撮影、人材紹介、ネイルサロンなど、幅広く事業を展開していますが、どれも「現場経験」から得た課題感をベースに組み立てています。例えば、ウェブ制作なら「実際に集客が難しい現場を経験してきた人間が提案する」。ネイルサロンでは「スタッフの働きやすさ」と「顧客満足度」の両立を実現させている。現場の肌感覚とマーケティングの仕組みを融合させて、再現性のある成果を出していく。それにより、お客様に成功を送る。これが弊社の理念になっています。ただ、人材事業だけは少し違くて、私自身、低賃金で働いていた時期があり、指3本失う大怪我も経験しました。うまくいかないことばかりでしたが、なんとか「頑張ろう」と思った結果、天職だと思うマーケティングに出会えました。これによって全事業がうまくいっているので、僕にとってマーケティングは人生の1つのキーワードです。私が展開する人材事業では、不満足な環境にいる人たちが希望を持って転職できるようにしていきたいと思ってます。将来的には、未経験および非大卒に特化した転職事業の領域でNO.1になりたいです。 

──そんな熱い想いを持っている中西社長が、ビジネスを通じて目指している「豊かさ」とは何でしょうか。 

「時間とお金の両立」ですね。お金さえあれば幸せではなく、時間があるから幸せだよねと思っているので、弊社に残業はないですし、今は週休3日制を目指しているところです。そして、自分たちだけが幸せになるのではなく「目の前にいる人を豊かにすることで、いろいろな人が幸せになる」と伝えています。 

遺言状に記す言葉は「こんな僕に力を貸してくれてありがとう」 

──これまでの経験から、これから起業を目指す方へ伝えたいことは。 

「自分にできるはずがない」と思っている人にこそ「あなたにもできる」と伝えたいです。僕は学歴も金もない、指も3本ないところから始めました。そんな僕でも、ちゃんとお客さんに選んでもらえて、組織をつくることができた。どれだけ失敗しても、それを経験に変えられれば前に進める。むしろ遠回りした分、人に伝えられるものが増えると思います。だから「うまくやろう」なんて思わなくていい。「ちゃんとやろう」って思えば、応援してくれる人は必ず現れます。 

──最後に、もし遺言状を書くとしたら何と書かれるか、教えてください。 

「自分のお葬式に何人来てくれるのか」を1つのテーマにしています。だから「こんな僕に力を貸してくれてありがとう」と伝えたいですね。1人じゃなにもできなかった。自分がここまで来れたのは、支えてくれた人がいたからなので。 

もともとは両親に恨みを持っていましたが、今は親孝行をしたいと思っています。なので「誰かのために生きる、誰かのために何かをするのっていいですよ」とも書きたいですね。 

もし、自分の息子に言葉を残すとしたら「人から力を借りられる人間になりなさい」って書くかも知れないです。「パパはそうだったよ」みたいに。 

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企業Profile

中西光希
LIVE THE CREATIVE株式会社 代表取締役
HP: https://szl.co.jp/

建設現場での事故により左手の指3本を失う大怪我を経験。その後、未経験からWeb業界へ転身し、広告代理店での実務を経て2020年にLIVE THE CREATIVE株式会社を創業。Web制作、ドローン撮影、人材紹介、ネイルサロン運営など、実業とマーケティングを掛け合わせた複数事業を展開している。建設業界出身だからこそ持つ現場視点と、マーケティングによる再現性のある仕組みづくりを強みとする。「時間とお金の両立」を掲げ、残業のない組織づくりや週休3日制の実現を目指すなど、働き方そのものの変革にも取り組んでいる。将来的には、未経験・非大卒特化の転職領域でNO.1を目指す。

LIVE Doctor ご紹介

大怪我という逆境を経て、キャリアを再構築し、起業に至った実行力と継続力は特筆すべきものがあります。学歴や環境を言い訳にせず、「ちゃんとやる」という姿勢を貫いてきた中西氏の歩みは、多くの挑戦者にとって現実的な希望となるでしょう。現場経験とマーケティングを融合させた事業設計、そして「目の前の人を豊かにする」という価値観は、一過性の成功ではなく、持続可能な組織づくりを志向する経営思想に裏打ちされています。LIVE Doctorでは、その再起のプロセスと判断軸に着目し、紹介いたします。