全国200店舗以上、各地でリハビリ型のデイサービスを提供する「リハプライド」。運営元であるリハコンテンツ株式会社の創業者、山下哲司社長は、デイサービスにおけるリハビリの常識を覆し、高齢者の自立と尊厳の回復を実現しています。野球少年から経営者へ、さらに介護分野の革新者となった山下社長。そのヒストリーと経営哲学、そして胸に抱く志を語ってもらいました。
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――山下社長の学生時代は野球一色だったと伺っています。
高校時代は強豪校・広島商業高校で野球に打ち込んでいました。私は左翼手を務めていましたが、残念ながら甲子園には出場できなかったんです。春の県大会では、決勝でレフトフライをグローブで弾いてスタンドインさせてしまい、相手のホームランをアシストしてしまうという苦い経験もしています。怪我でリハビリをすることも多かったのですが、それが今のリハビリの仕事につながるとは夢にも思いませんでした。
――ビジネスに興味をもったのはどういった経緯だったのですか。
大学1年の途中で、怪我で野球を断念。悶々とした日々の中、藤田田さんの「ユダヤの商法」という本を読み、商売にはこんなノウハウがあるのかと驚きました。藤田田さんのもとで商売を学びたいと思い、当時日本マクドナルドの親会社だった藤田商店に応募しました。
「新卒の採用はない」と断られつつも食い下がり、憧れの藤田田さんの面接を経て、無事入社を果たしました。ただ、当時マクドナルドが急成長していた時期で、想像していた仕事とは違い、半年ほどで退職しました。
藤田商店は日本にブランドビジネスを定着させた会社。ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなどのハイブランドをいち早く買い付け、日本の総代理店としてデパートに流通させていました。ブランドビジネスとフランチャイズ展開の基礎は藤田商店で学んだと思っています。
――その後、起業と挫折も経験されたのだとか。
藤田商店退職後は、新卒時にもご縁があった不動産会社で働いていたのですが、26歳のとき、広島の家庭の事情で退職の意思を伝えました。すると社長が「君が帰るのではなく、ご両親を東京に呼べばいい」と、個人的に300万円を援助してくれたんです。その恩を胸に、そこでは約5年働きました。
ここでもフランチャイズ展開の企画から開発、営業まで携わったほか、ゼロから会社を創り上げてきた社長の直近で働く中で、組織づくりや理念浸透についても学びの多い環境でした。
とはいえ当時の給料で家族を支えていくのは簡単ではなく、若さゆえの成功への焦りもあり、お知り合いの方と共同事業という形で起業しました。前職に少しでも迷惑がかかったらいけないと考え、あえてまったく知見のない「電子機器販売」という分野で挑戦したのですが、3年で事実上の倒産。8,000万円ほどの債務を抱えることになりました。
借金返済のためにさまざまな仕事をし、43歳でようやく完済します。このときは「絶対に自分で商売はやらない」と心に決め、「日本一幸せなサラリーマン」を目指して頑張っていたんです(笑)。

――日本一幸せなサラリーマンを目指していたはずの山下社長が、リハビリ型デイサービス事業を始めたのはなぜでしょうか。
2005年、介護保険が使えるデイサービスでリハビリを始めた先駆者の理学療法士、塩中雅博さんと出会いました。塩中さんは、自社だけでリハビリを広げることに限界を感じ、フランチャイズ展開を検討されていました。ところが、コンサルタントや取引先に相談していたものの、なかなか形にならないと悩んでおられたのです。そこで、マクドナルドをはじめさまざまなフランチャイズに携わった私の経験を活かせると考え、フランチャイズ展開のお手伝いを始めることになりました。
その中で気づいたのは、理学療法士などの専門職を介さずにきちんとしたリハビリが提供できる方法があれば、異業種からの参入者の方がかえって力強く事業を推進できるのではないかということでした。そう思っていた時期にお会いしたのが国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁先生です。竹内先生が提唱する理論は、豊富な医学的エビデンスに基づき、高齢者などの維持期(※)のリハビリに理学療法士や作業療法士を必要としないアプローチを提案しており、まさに私の想いと重なるものでした。そこで竹内先生に何度も頭を下げてお願いして、ようやく直接ご指導いただけることになり、現在のリハプライドのフランチャイズ展開の形が完成しました。
※:リハビリは回復の経過によって、急性期・回復期・維持期の3つのステージに分けられる。維持期とは、回復期を終えて自宅や施設に戻った後のこと。
――日本におけるリハビリ提供の課題については、どのように捉えられていたのでしょうか。
日本の医療は、急性期と回復期については世界的にも評価が高いんです。しかし問題は、回復期を終えて自宅や施設に戻った後の「維持期」です。日本は男女ともに長寿国ですが、高齢者の寝たきり率は世界一。退院後の維持期にも継続的なリハビリが必要なのですが、外来リハビリは月に13回、1回あたり20分という制限があります。
もう一つの大きな課題は介護保険制度の矛盾です。政府は維持期のリハビリは介護保険を使って取り組むよう推奨していますが、介護保険では要介護3の方へのサービス提供の方が、要介護1や2の方へのサービス提供よりも報酬単価が高く設定されています。つまり、利用者の状態が改善すると事業者の収入は減ってしまう。この制度設計が、改善回復を目指すリハビリの提供を阻んでいます。
維持期のリハビリは、急性期・回復期のリハビリとは全く異なるアプローチが必要です。リハビリは理学療法士や作業療法士がいないと提供できないという常識がありますが、私たちはそれを覆す形でサービスを構築しました。
――具体的にはどのようなリハビリを提供しているのでしょうか。
ドイツで開発されたリハビリ専用トレーニングマシン6台を導入し、軽い負荷で回数を増やしたトレーニングによる「座る、立つ、歩く」といった動作の改善と、「水分、栄養、運動、排便」といった基本的なケアを行います。サポートを行うのは理論を学んだ専門スタッフ。この方法の優れている点は、マシンを正確に使用することと、自立支援介護学の理論に基づいたケアを組み合わせることで、理学療法士のスキルや経験に左右されず、誰が提供しても同じ質のリハビリを実現できることです。
毎年「リハビリ成果研究発表会」を開催し、各施設での顕著な改善例を共有していますが、3か月ほどで歩行が改善したり、認知症の症状が軽減したりといった事例が多数報告されています。
――医療関係者からの反応はいかがですか。
面白いことに、最初のフランチャイズ加盟店は医療法人でした。院内で理学療法士を雇ってリハビリを提供しようとしたもののうまくいかず、リハプライドのシステムを見て、「理学療法士がいなくてもこれほどの回復が見込めるリハビリが提供できるなら」と加盟していただいたのです。
つまり、医療機関でさえ、維持期における従来のリハビリ方法に限界を感じていたのです。現在では多くの医療法人がフランチャイズに加盟していますが、異業種からの参入も積極的に受け入れています。ノウハウよりも重要なのは、利用者様の回復と改善に真摯に取り組む姿勢です。
私たちが目指しているのは、介護される方の気持ちを大切にすること。多くの高齢者は「また元気になりたい」「自分らしく過ごしたい」と思っています。しかし、主治医から「もう年齢的に良くならない」と診断されると、介護現場でもその考えが踏襲されがちです。私たちは、高齢者の潜在能力を信じ、リハビリを通じて自立と誇りを取り戻していただくことに全力を注いでいます。

――経営危機を乗り越えたと伺いました。その経験から得た学びは何ですか。
100店舗まで順調に成長したところで、上場を目指すために管理部門の強化などさまざまな投資をした結果、経費だけが増えて売上が伸び悩み、苦しかった時期がありました。その際、大企業と資本業務提携し、財務内容の改善や管理体制の見直しなどを行いましたが、文化の違いなどを埋められず、最終的には提携を解消しました。
この経験から学んだのは、理念に賛同して一緒に仕事をしてくれる仲間の大切さです。どれだけ実績がある組織や人でも、理念に対する考えが異なる方とは離れるという意思決定が必要。理念を大切にすることが、結果的に経営を強くしていくことにつながると考えています。
フランチャイズ展開においても、理念の共有ができるかどうかは必ずチェックします。健全経営で利益を出していくことは大前提ですが、一番大切なのは「人生の先輩にリハビリと誇りを」というブランドの理念です。リハビリのおかげで認知症が改善したり、パーキンソン病の方がスムーズに動けるようになったり、脳梗塞で麻痺があった方の動作が改善したり。そんな回復改善のお手伝いをすることに、誠実に取り組んでいただける方と理念を共有し、事業を一緒に進めていきたいと思っています。
――2,000店舗という目標を掲げていますが、その先にある理想は何でしょうか。
2,000店舗という目標は、単に会社を大きくしたいとか有名になりたいということではありません。「介護の固定観念を改善して喜ばれ、事業としても健全に運営できる」という姿を社会に示したいのです。
日本は世界で最初に超高齢社会を迎えた国です。超高齢社会との向き合い方のひとつの答えが、維持期リハビリのあり方だと思います。そういうあり方を、心ある経営者の方と分かち合いながら、リハプライドというブランドをもっと社会に広げていきたい。そして、リハビリを通じて地域に喜ばれ、利用者様やご家族に安心していただけるサービスがあるべき姿だということを社会に広めていくことが目標です。

| 会社名 | リハコンテンツ株式会社 |
| 事業内容 | リハプライドフランチャイズ本部運営 リハプライド直営事業所運営 |
| オフィス住所 | 千葉県船橋市習志野台2-6-5 高橋ビル2階 |
| URL | https://rehacon.com/ |
