「直感で動いて、思想でつなぐ」。 スマホアプリを中心に、150本以上のカジュアルゲームを開発してきたNobollel株式会社の代表取締役・黒川晃輔社長。起業の原点にあるのは、エンタメと違和感への深い関心だった。本稿では、彼の創業ストーリーと、今後の社会を見据えたゲーミフィケーション戦略、 そして個の時代における働き方の未来についてお話を伺いました。
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――なぜ起業という道を選ばれたんですか?
スーツを着る仕事は無理だな、と思っていたんですよ(笑)。
それと昔から、漫画やアニメ、ゲーム、スポーツなど、いわゆる国を越えて人を熱狂させるエンタメが大好きで。
将来はグローバルに、スケーラブルにサービスを展開したいという思いがありました。ちょうどiPhoneが出て、ソーシャルゲームの波が来ていた時期だったので、その流れにも後押しされましたね。
――創業当初に感じた難しさや、突破のきっかけは?
資金調達の面でも困難がありましたし、人の採用でもミスマッチがありました。また、結構勢いで判断しちゃうタイプなので、投資をしすぎてお金が足りなくなることもありましたし、「これいけるやろ」と思って突っ込んでうまくいかなかったことも多かったですね。ただ、逆に直感が当たって、台湾に拠点を作ったときは、海外のイベントで出資案件が決まったりしたこともありました。結局、事業も組織も資金調達も、すべては「人」に起因するなと思っていて。じゃあどうするかというと、自分をアップデートしていくしかないんですよね。
――自分をアップデートしていくしかないと。
やっぱり、継続的に自分の器を広げていくことですね。今まで何回も、自分の成長が追いつかずに失敗したなと思うことがありました。「人間関係でつまずくのは、自分の内面の反映だ」みたいに捉えて、自己変容していくことはすごく意識しています。失敗してきた人間関係を「大変」と思わないのも、この考えを持っているからかもしれません。感情としてはあっても、すぐに忘れるし、次の興味に移っていく。そういうスタンスです。僕は精神的にどんどん高めていきたいなという思想があります。

――現在、注力されている「ゲーミフィケーション」について教えてください。
今は「ゲームの熱狂」を他分野に転用することにチャレンジしています。販促や教育、地方創生など、そういった社会的な活動にゲームの要素を入れてみる。例えば「1km歩いたらポイントがもらえる」という仕組みもポイ活として既に確立されてるし、それをもっと面白くしたい。僕は『ポケモンGO』ってすごいと思っていて。あれによって、おじいちゃんやおばあちゃんが孫と一緒に遊べたり、共通の目的を持ってコミュニティが生まれたりするじゃないですか。あのようなサービスが、いろいろな場面でできると思っているんですよね。
――具体的に、どのような応用が可能だと考えていますか?
例えば、地方は本当に多くの課題を抱えているじゃないですか。人がいない、プロモーションが届いていないなど。でも、そこにエンタメ要素を加えれば、人が集まる理由になる。実際、コロナ以降、日本の自然の価値に改めて気づいて、いろいろなパワースポットを巡ったりもしたんですけど「もったいないな」と思う場所がたくさんあるんですよね。そういう場所でイベント的なものをやって、デジタルとリアルを融合させたら、スマートシティ的な取り組みにもつながると思っています。
――ビジネスとして成立させるには、どのような仕掛けが必要だと思いますか?
ポイントは、ユーザーのエンゲージメントを高めることです。今ってユーザー獲得の単価も上がってるんですよ。だから、どうやってロイヤルカスタマーにしていくかが重要。その中に、ゲーム的な要素、つまり「継続したくなる」「つい参加したくなる」を組み込んでいく。単なるゲームアプリとしての勝負は、ボラが激しすぎて厳しい時代ですけど、販売促進や人材育成のツールとしてなら、再現性のあるモデルがつくれると思っています。

AIの進化で、人間は確実に暇になると思っています。単純労働だけじゃなくて、ホワイトカラー的な仕事もどんどん置き換わっていく。そうなったときに、人類が何をするのか。僕は、そこで「エンタメの価値」が爆発的に高まると感じているんです。詰め込み型の教育や、正解のある学びをAIが代行できるようになったら、必要なくなるんじゃないかとも思っていて。これからの社会では「自分が何を信じられるか」や「本当に好きなことは何か」という、すごく曖昧で感覚的な問いの方が大ごとになってくると思います。
そして、フェスや地域での体験イベントなど、もっと細分化されたエンタメが増えていく。例えば、山奥でキノコを採るフェスや壺を作るワークショップなど、ニッチな需要に対応するイベントや体験がもっと増えていくと思っています。
――共に未来を創る仲間に伝えたいことは?
これからはAIによって人間の働き方も価値観も変わっていくと思うんです。そんな時代に、いかに面白く生きていくか。その軸に「エンタメ」があると僕は思っています。僕自身、理系から文系に転向したのがセンター試験の1週間前なんですよ。「降ってきた」って感じでした。今思えば、あれもインスピレーション。人生の大きな選択って、実は感覚が先で、思考は後なんじゃないかって思っています。だから「ごちゃごちゃ言わんと、直感で来てくれ」っていうのが、正直な気持ちです(笑)。僕は感性を大切にしているし、ワクワクするかどうかで動いているので、そういう感覚を持っている人と、一緒に面白いことをやっていきたいですね。
――事業を通して、世の中に残したいもの
僕の感覚でいうと、現実は『マトリックス』のような仮想現実なんじゃないかと感じています。これはスピリチュアルな意味ではなくて、意識や情報のデジタル化と視覚再現性が極まれば、もはやそれは現実と同じだと思っているんですよ。エンタメって、その仮想現実にアクセスするための近道だと思っていて、例えば体にハンディキャップがあってもデジタルの世界では自由に動けるかもしれない。そういう意味で、ゲームやエンタメは「人間の限界を超える装置」になり得るかなと思っています。
マーケティングや教育、地域活性の中にゲームの熱狂を埋め込んで、新しい社会体験をつくっていきたいです。
