早稲田大学を卒業して入社した会社が、まさかの半年で倒産。転職する気力がなく起業を決意するも、1社目にはビジョンが定まらず、迷いの中での経営でうまくいかなかった。挫折を経験する中「もう一度、自分自身が納得できる挑戦をしたい!」という想いで生まれたのが、株式会社sizzleだ。ワクワクする「あたりまえ」を作る。このビジョンから誕生したsizzleスカウターが、いま営業の効率を劇的に変えている。株式会社sizzleの樋口大介社長が語る、原体験とこれからのビジョンとは。
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――まず、起業されたきっかけを教えてください。
大学卒業後に入社したベンチャー企業が、なんと半年で潰れてしまったのです(笑)。本当に突然の出来事で「どうしようか」となったときに、あまり転職するエネルギーがなかったので、起業を選択しました。それで、2011年に株式会社イツザイを立ち上げました。
──イツザイではどのようなご経験をされたのでしょうか。
正直、起業当初は何の大志もなく、「とりあえず生活しなきゃ」としか思っていませんでした。ビジョンもないまま始めた会社に人が増えていったとき、会社は一つにまとまりきらなかったのです。
それに、クライアントワークを受けても「誰のどんな課題を解決しているのか」「なぜ自分がこの仕事をやっているのか」が明確にならなかった。そのうち、役員との間で価値観の違いや仕事の進め方のズレが出てきて、自分の中でも「このまま続けていていいのか」というモヤモヤが大きくなっていったのです。そんなときに、sizzle取締役の石谷(夏樹)に声をかけ、新しいことを一緒にやることを決めました。一度白旗をあげてしまったので、今は2回目の起業家人生を歩ませてもらっている、という感じですね。
株式会社sizzleのビジョンは、ワクワクする『あたりまえ』を作る。
とにかく、ビジョンがはっきりした会社を作りたかったので、sizzleを作るときはとことん話しました。
今は、この言葉のもとに人が集っている感覚があるので、ビジョンがブレない限り楽しいですよ。それに、意思決定やメンバー、事業など、全てこの軸で決めているので、迷いがない。今はすごく恵まれているな、って思います。

──sizzleスカウターも、このビジョンに則って開発されたということでしょうか。
そうですね。営業を楽しいものにするための装置として開発しました。だから、サービス理念は「次の商談が楽しみになる」。商談って「緊張する」「しんどい」ってイメージを持たれがちですが、このツールがあれば「早く話したい。なんか今日の商談はいけそうな気がする」って思えます。
──どういったこだわりがありますか。
1つ目は「見た目」です。営業の方って、見た瞬間に「うわ、難しそう」と感じると、もうそこでアレルギーが出ちゃうことがあるのです。感覚的な話ですが、フォント一つで難しいサービスに感じることもある。なので、ビジュアルにはめちゃくちゃこだわっております。BtoCアプリのような親しみやすさを意識しているので「シズルン」というキャラクターもいたりします。
2つ目のこだわりは「データを渡して終わりにしないこと」。
営業にとって大事なのは、数字そのものではなくて「この情報をどう商談に活かせるか」なんです。
sizzleスカウターでは「このデータが出たら、こう話す」というところまで書かれているので、営業の方がそのまま現場で使える状態で受け取れるようにしています。
そして3つ目は「営業フローを変えさせないこと」。
新しいツールを入れると、使い方を覚えなきゃいけなかったりして、それだけで負担になる。なので、今の営業スタイルに自然に入り込むように設計していて「何も変わらないのに、気づいたら手元にレポートが届いている」くらいの感覚で使ってもらえるようにしています。


──導入企業からは、どういった声が届いていますか
最近だと、とあるエステサロンさんから「sizzleスカウターを導入した月の契約率が100%でした」と連絡をいただきました。前月の成約率は約80%だったと聞いているので、20%アップですね。
あと、不動産業界の新人の方で、契約率が8%だったのが、3ヶ月間sizzleスカウターを使ったら20%まで上がったという話もありますし、別の営業の方では、次回アポ率がチームで最下位だったのが、1ヶ月でトップになったという実績があります。


──今後の展望をお聞かせください。
事業としての軸は「ワクワクする『あたりまえ』を作る」なので、これに沿ってさえいれば、将来的には店舗型のビジネス展開など、いろいろな可能性があると思っています。
今やりたいことの1つはイベントで、リアルな場で、心が動く瞬間を自分たちで作りたいのです。面白いことに、こうして動き続けていると「やりたいこと」がどんどん生まれてくるのですよ。習い事多すぎる小学生みたいな状態で「いつ仕事するの?」ってくらいですが、めちゃくちゃ楽しいんですよね。このカルチャーを一体何人まで広げられるのか。30人なのか、50人なのか。今、一番ワクワクしているところです。
──最後に、もし遺言状を書くとしたら何と書かれるか、教えてください。
「強く、明るく、元気よく」です。先日「メンバーのルーツを辿ろう」という企画で、実家の山形に行ってきました。
実家ではご両親と一緒にバーベキューをして(笑)。そのとき、彼の実家の近くにある神社に行ったら、メッセージを書いた風鈴をつるせると聞いたので、メンバーに「sizzleらしいメッセージを」とお願いしたら「強く、明るく、元気よく」と書いていて、本当にいいなと思いました。
遺言状であっても、難しいことやかっこつけたこと、格言的なことは書きたくないですね。誰かが「強く、明るく、元気よく」って書かれた遺言状を見たとき「確かに樋口はそうやって死んでいった」と思ってくれたら、私はうれしいです。それに、もし息子が「この言葉通りに生きよう」と思ってくれたら、それで十分だと思えます。
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樋口大介
株式会社sizzle 代表取締役。
HP: https://szl.co.jp/
株式会社sizzleは、「sizzle式インサイドセールス」を軸に、営業活動の効率化と質の向上を支援する企業である。営業を個人の経験や勘に委ねるのではなく、情報設計や事前準備の質を高めることで、再現性ある成果につなげる点に特徴がある。樋口は、起業と失敗の経験を経て、組織や事業におけるビジョンの重要性を重視し、意思決定の軸を明確にした経営を行ってきた。現場で使われ続けることを前提に、営業フローを大きく変えず自然に組み込める設計思想を強みとしている。
樋口大介氏を紹介する理由は、事業や組織を「どう成長させるか」を感覚論ではなく、構造と実務の視点から語れる経営者である点です。LIVE Doctorが大切にするのは、肩書きや規模ではなく、専門性と判断のプロセスが社会にどのような価値をもたらしているかという視点。樋口氏は、過去の挫折を踏まえ、自身が納得できる軸を持った経営を選び続けています。その姿勢は、営業や組織づくりに悩む経営者にとって、冷静に参考にできる判断材料となるはずです。